大事なのはお金じゃないんだ症候群

みんな毎日を一生懸命生きている。だから多くの人は、自分の「お金」については貪欲なはずだ。少しでもいい収入を得たいと言うのは、極めて健全な意識だと思う。 しかし、赤の他人の「懐事情」になると、だんだんに「きれいごと」になっていく。 このところの上沢直之の移籍をめぐる騒動を見ると、自分たちと距離がある人に対しては「きれいごと」を求めると言う、一般庶民の習性をを見る思いがする。 上沢直之に対して古巣ソフトバンクが提示したのは1年1.7億円程度、ソフトバンクは4年10億円程度の提示をしたとされる。 自分が上沢の立場にあれば、多少悩むにしても、ほぼすべての人は上沢と同じ選択をすると思われるが、上沢には「強欲」「チームを捨てやがって」「裏切者」みたいな声が上がるのだ。 プロ野球選手は小さいころから一心に努力を続けてきた。怪我、故障のリスクもある。競争も厳しい。そんな中で、才能に恵まれ、幸運もあって、努力の甲斐あってポスティングでの移籍を認められた。 このことこそが、上沢にとって生涯をかけた挑戦の、最初の関門だったはずだ。 上沢に対するMLB側の評価は低かった。日本ハムには雀の涙のような譲渡金しか支払われなかった。また、与えられたチャンスは極めて少なく、そのチャンスをつかみことなく、1年でNPBへの復帰を決めた。そして「好待遇を示した球団」に入団した。彼の判断そのものに、何の瑕疵もない。 しかし一部のファンは「金が少なくても、日ハムに帰るべきだ」となぜか思ったのだ。 お金が少なくても、上沢は日ハムで育ててもらったのだ。ものすごい恩義があるはずだ。お金が少ないくらいなんだ! 「大事なのはお金じゃないんだ」となるわけだ。 そういうファンのほとんどは、億の単位どころか、千万の単位のお金にも縁がない。 「俺たちからしたら、1億も10億も同じだ」みたいな、素朴な庶民感覚があって、その感覚で、上沢を批判しているのだ。 およそ世の中で、一番怪しいのは「大事なのはお金じゃないんだ」と言って言い寄ってくる人間だ。 そういう人に関わったら、えらい目に合うのは火を見るより明らかだ。 しかし、自分とは何の関係のない、そしてはるかに遠い距離にいる上沢直之に対しては、そういう感覚で批判をするのだ。小市民的というか、つまらないというか。 プロ野球選手や有名人に対する「大事なのはお金じゃないんだ症候群」は、日本の国では、少なからぬ影響力を持っている。日本のある種の病理ではないかと思う。 私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください! ↓ 好評発売中!